画面全体にクモの巣状のヒビが広がり、タッチするたびに細かいガラス片が指に刺さりそうな状態のiPhone XR。
「画面は映っているし、操作もできるから……」と透明なテープを貼って使われ続けるケースも多いのですが、XRの画面構造を知っていると、この状態がいかにギリギリのバランスで保たれているかが分かります。
有機ELとは違う「液晶(LCD)」特有の壊れ方
iPhone XRに搭載されている「Liquid Retinaディスプレイ」は、非常に美しい発色を持つ液晶パネルです。
しかし、バックライト構造を持つ液晶だからこそ、ガラスの破片が深く刺さると裏側のバックライト層まで傷が達し、画面に白い輝度ムラ(白いシミ)や、紫や緑の縦線がビッと走る「液晶漏れ」へと一気に悪化します。
さらに、割れた隙間から入った湿気や汗が、画面上部にある「Face ID(顔認証)」や通話時に画面を消す「近接センサー」の基盤を浸食してしまうのが一番怖いポイントです。
ただ画面を付け替えるだけでは終わらない、移植の工程
作業台の上でフロントパネルを開けたら、まずは破損したパネルから重要なパーツをひとつずつ慎重に救出していきます。
特に神経を使うのが、画面上部に固定されているイヤースピーカーとセンサー類が一体になったユニットです。 強力な接着剤で固定されているため、適度に温めながらプラスチック製のヘラで少しずつ起こしていきます。万が一ここでケーブルを断線させたりセンサーに傷をつけたりすると、Face IDが二度と使えなくなってしまうため、息を呑むような精密さが求められます。
そしてもうひとつ欠かせないのが、画面の色調を自動調整する「True Tone」機能のデータ移植です。
新しく取り付ける画面に専用のプログラマー(読み取り機器)を接続し、元の壊れた画面からシリアルナンバーのデータを読み出して、新しい画面のチップへと書き込んでいきます。このデータ移行を行わないと、画面を新品に交換してもTrue Tone機能が消えてしまうのです。
ガラスのチリを1つ残さず除去し、元通りのフレームへ
古い画面を取り外した後のアルミフレーム外周には、砕けたガラスの微粉末や古くなった耐水シールがびっしりと残っています。
これらを特殊な刷毛と脱脂剤でキレイに取り除かないと、新しい画面を嵌めたときにチリが噛み込んで、内側から画面を押し割ってしまう原因になります。
フレームの清掃を終え、新しい耐水パッキンを貼り直し、センサーとデータが移植された新しいディスプレイを組み上げます。
輝きを取り戻した画面と、変わらない使い心地
パチッとフレームが隙間なく噛み合い、下部のネジを締め込んで修理完了。
電源を入れると、色鮮やかなリンゴマークが浮かび上がり、ロック画面ではFace IDがスムーズに認証。スワイプの追従性も、環境光に合わせたTrue Toneの優しい色合いも、事故に遭う前とまったく同じ状態で手元に戻ってきます。
中のデータや各種設定には一切触れずに作業を行うため、受け取った瞬間からいつもの日常が戻ってきます。
「画面がバキバキで操作するのが怖い」 「縦線が出て画面が見づらくなってしまった」
そんな状態になってしまっても諦めないでください。精密な移植と清掃を経て、あなたのiPhone XRをもう一度安心して使える状態へと丁寧にお戻しいたします。